【破壊的イノーベーション】がベンチャ―企業に本当に必要か、をジックリと過去を振り返って考えてみた。
『今年のキーワードは、【距離感】だよなぁ、やっぱり。』
と昼下がりのランチをパクつきつつ、久しぶりに渋谷のMojaでブログをしたためております。
※距離感についての考察ブログ:
有料課金モデルで高めるべきは、コンテンツの「クオリティ」ではなく受け手側との「距離感」。 | 隠居系男子
なぜ、今、【破壊的イノベーション】を考察するのか
以前からキーワードとしては聞き慣れていたものの、自分の実体験との紐付きが薄く、理解が浅かったなぁと感じていました。
それが、この年末年始にfacebookのタイムラインにて、【破壊的イノベーション】についての記事が踊っていて、それを眺めながら過去のアレコレを改めて思い直して整理をしてみようというわけです。
そして、この思考を整理しておくことで、今後関わるベンチャ―企業の成長における歩みに、【破壊的イノベーション】モデルか否か、それぞれの場合、どういう打ち手を打つべきかを提案できるのでは、と考えたのです。
そもそも、【破壊的イノベーション】てなんですか?
ということを色々と事例も含めて書かれているのがwikipedia(やっぱり便利!)
要は、【破壊的イノベーション】とは、破壊的技術がもたらす変化を破壊的イノベーションという。
破壊的技術(はかいてきぎじゅつ、英: disruptive technology)とは、従来の価値基準のもとではむしろ性能を低下させるが、新しい価値基準の下では従来製品よりも優れた特長を持つ新技術のことである。
【破壊的イノベーション】の対になる言葉があって、それが【継続的イノベーション】というもの。
持続的技術とは主流市場の主要顧客が評価する性能指標(すなわち、従来の価値基準)のもとで性能を向上させる新技術のことである。持続的技術がもたらす変化を、持続的イノベーションという。
年末年始に目にして興味深かった記事:
要は、Uberは【破壊的イノベーション】じゃないよー。iphone見習え〜という感じ。
要点で大事そうなポイントの抜き書き:
- Uberは破壊的イノベーションなどではありません。破壊的イノベーターは、まず低価格帯の市場、あるいは新市場から参入します。Uberの動きは、こうした参入の仕方と一致していません。また、市場を支配してきた大企業は、既存顧客に対して過剰な適応を行い、余計な機能を提供してしまっていますが、タクシー業界ではそのような事態は起こっていませんでした。
- たとえば、破壊的イノベーションの典型例のひとつとされている米アップルのiPhoneはそのひとつです。クリステンセン教授は、iPhoneは製品自体は漸進的改良にすぎないものの、ビジネスモデルを革新することによって破壊的イノベーションを成し遂げた例として記述しています。(※1)
- 破壊的イノベーションはまず「無消費者」と呼ばれる既存の消費セグメントではない、新しいセグメントによって支持されます。徐々に従来市場の核となってきたセグメントによって採用されていくのです。こうして市場のなかで時間をかけて納得性をもって形成されていったブランドは、消費者によって理解され、強い愛着をもって維持されるでしょう。
要は、資本家は資本増やすのが目的で、それは短期間で安定して儲かるのが良くない?という感じ。
要点で大事そうなポイントの抜き書き:
- もう一つ、成長しないイノベーションがある。それは「効率化イノベーション」である。これはオペレーションのコストを下げる工夫が当てはまる。作業の自動化や、ムダな工程を省くことによるコストダウンは「効率化イノベーション」である。ITシステムに投資し、社内の会計管理が効率化しても、利益は増えるが、売上が増えるわけではない。損益計算書のトップライン(売上)が横ばいということは、顧客が企業活動に支払った価値の総額も増えていない。ところが、ボトムライン(利益)は資本家が儲かる分として増える。「効率化イノベーション」は企業の成長は生まないが資本は増える。
- 効率化イノベーションで生み出した資本を、「破壊的イノベーション」に投資すれば長期的な成長は可能だ。しかし、それは正論に過ぎない。なぜならば、手元のお金は効率化イノベーションに再投資したほうが確実に、早く、儲かるからだ。破壊的イノベーションは、それまでの知識や経験が活きず、不確実でうまくいく保証がないうえに、成功したとしても、時間が非常にかかる。効率化イノベーションには確実性がある。効率化に投資したとすると、削減できる人件費や期間は比較的明確で、回収期間も予測がしやすい。これが「資本家のジレンマ」である。
- 「イノベーティブ」なアイデア募集をやってみたり、部門名を「イノベーション」とつけてみたり、「ビジネスモデル・キャンバス」を書いてみたり、と単発の施策を打つ企業は増えてはいるが、今ひとつ成果が出ていないというのが実態ではないだろうか。イノベーションは難しく、数多くのジレンマと対峙するという前提なくてはなりたたない。5つの観点で一貫した取り組みができているのかを、いま一度確認する地道なマネジメントが必要であろう。
※5つの観点:組織、プロセス、人材、マネジメント、実行
さて、思考の素材は出そろいました。
そして、私の実体験とコレをどう理解しようかなと思って整理をしてみました。
ちなみに、クックパッドもランサーズもWEBサービスであることから、前提の【破壊的技術】というわけではなくビジネスモデルの発明ですので、上記のiphone的なアプローチ(※1)です。
クックパッドで私がやってたことは、【破壊的イノベーション】だったのか
私がクックパッドで何をしていたのかは、こちらの記事を参照ください。
要は、広告業界にて、既存のマス広告(特に雑誌)への食品飲料業界の出稿をインターネット広告へ載せ換えるという活動を行っていました。
そのため、取引先は、いわゆる広告代理店や食品メーカーのマーケティング担当者の方々で、ある程度決められた予算をクックパッドへと割いて頂くというものでした。
これは、上記の説明にあるところ、【継続的イノベーション】または、【効率化イノベーション】の領域であるなと。
既存の広告業界内でのポジションの確立は、既存のルール(より多くの消費者へアプローチしたい、認知度を高めたい、好感度を高めたい)の延長上にクライアントにニーズを満たすことが必要になります。
‘より安くより良い価値’を提供することでリプレイスが効くのです。
そういった意味で、既存業界へ風穴をあけるようなベンチャ―企業は、以下のジレンマに直面すると思います。(※その解決については別途改めて)
・市場規模の上限が見える
・明確な既存の競合プレーヤーとの争いが発生する
・常に新しい価値提供が必要で改良改善が急ぎ求められる
クックパッドでの私の経験はあくまで‘既成市場でのリプレイスであった’ということが理解できました。
※クックパッド社としてはもちろん、その後の事業や成長において、まさに【破壊的イノベーション】と言える事象もあるように思いますが、私個人のビジネス経験としては【継続的イノベーション】または、【効率化イノベーション】だったな、と。
ランサーズでやってたことは、【破壊的イノベーション】だったのか
私がランサーズで何をしていたのかは、こちらの記事をご参照ください。
まあ、とにかく辛かったですね・・・。改めて読み返すと涙が出ます。
具体的には営業手法を思いつく限りやりまくりました。都内の街を決めてビル倒してまわったり、テレアポのリストをランサーズで依頼して作って終日テレアポをしたり、また、鎌倉の商店街にビラ配りしたり、、、全てしてもダメでした。(笑)
その営業手法については色々とその後も折にふれて考えることがあったのですが、今回の【破壊的イノベーション】を考えるにあたり‘なぜうまく行かなかったか?’が解決しました。
つまり、2012年当時には、クラウドソーシングというビジネスモデル自体が破壊的技術であったから、に他なりません。
詳しく説明しましょう。
破壊的技術の説明にある《従来の価値基準》のもとではむしろ性能を低下させるが、《新しい価値基準》の下では従来製品よりも優れた特長を持つ新技術だったからです。
この新技術は複合的なものであり、主にこの3つが組み合わさることを指します。
- 多数のデザイナー、エンジニア、ライター他フリーランスの方々へのネットワーク(メッセージやチャットなどのコミュニケーションによる連絡のやりとりが可能)
- エスクロー決済やカード決済などのお金の支払い、受け取りの仕組み
- 相互評価や過去の実績や業務などの作品事例や案件のアーカイブ
より具体的な事例として[WEBサイトを制作]、[ロゴマークを制作]、[テレアポリストをつくる]の3つを例示します。
CASE 1 [WEBサイトを制作]
《従来の価値基準》
※既存の制作会社で[WEBサイトを制作]する場合、
・クオリティ
・納得感 (心的満足度)
《新しい価値基準》
※クラウドソーシングで[WEBサイトを制作]する場合、
・コスト
・スピード
・クオリティ
CASE2 [ロゴマークを制作]
《従来の価値基準》
※既存の制作会社で[ロゴマークを制作]する場合、
・クオリティ
・納得感 (心的満足度)
《新しい価値基準》
※クラウドソーシングで[ロゴマークを制作]する場合、
・コスト
・スピード
・クオリティ
・バラエティ(種類の豊富さ)
CASE 3 [テレアポリストをつくる]
《従来の価値基準》
※社内の人員(バイトや社員)で[テレアポリストをつくる]する場合、
・コスト
・スピード
・クオリティ
《新しい価値基準》
・コスト
・スピード
・クオリティ
独断と偏見ですが、既存の価値基準は、CASE1−3でも定量的、定性的で判断基準が合うものは、実は、CASE3の‘単純作業’のみだということです。
CASE1、CASE2の仕様やエンジニアリングの専門性、ビジュアル的なデザイン性は結局のところ、クライアントの納得感が一番大きな要素のため、クラウドソーシングで提供する《新しい価値基準》がそもそもの議論の俎上にすら載せらてませんでした。
顔を合わせて、直接会っている安心感、信頼感、そして、それがもたらす納得感 (心的満足度)は結局のところ、なかなかに指標としてクライアントに理解を得るのがむずかしいものでした。(そもそも、良さの評価軸が違うのですもの・・・汗)
このCASE分けは、クラウドソーシングでいうところの依頼方法の3つのパターン、 プロジェクト型[CASE1:WEBサイトを制作]、コンペ型[CASE2:ロゴマークを制作]、タスク型[CASE3:テレアポリストをつくる]という仕分けになります。
より詳しくはこちらをご参照ください。
(それぞれの説明があります:ランサーズにはじめての方 )
この価値基準が異なるということは、空手と剣道、水泳と水球という全くの似て異なるものであります。
そのため、事業運営においても、業界自体、そして、その活用についても啓蒙と理解を必要とするため、クックパッド社で行ったような既視感のある事業創りが全くできなかったのでした。
( ※制作会社の営業的な活動をすると、クラウドソーシングの強みであるコストメリットがなくなるため )
というわけで、ランサーズで行ったことは、いわゆる【破壊的イノーベーション】であったなと思うわけです。
事業の創り方、行動の進め方については、そういった意味で【破壊的イノベーション】か否かを理解し、行動を選択することが大切であると納得したのでした。
余談
【破壊的イノベーション】は、上記にあるように一度築いてしまえば、しばらく安泰というものですので、非常に魅力的です。それはどの企業も取り入れるべきだと思うのです。一方で実際に事業を推進する、売上予想を立てるという業務に落とし込む時には、それは非常に難しいのです。
その双方のメリットを活かしつつ、事業もスムーズに推進するためには・・・
会社/ミッションをつくる上では、【破壊的イノベーション】を意識すべし
事業/売上をつくる上では、【継続的イノベーション】を意識すべし
どっちもベンチャ―経営をするうえで大切なことだということですね、と。
※更に思考を深めたので、また、その辺りの議論をしたいという方がおられましたが、1月20日19時の横浜IT飲み会に参加いただき、議論ができれば幸いです。(コマーシャルです!)
では、お後がヨロしいようで。